小学校4年生では、1年間の季節の変化を調べます。その観察対象として、どの教科書も共通してサクラを挙げています。これはなぜなのでしょう。
小学校の校庭にはサクラが植えてあるから? それもあるでしょう。でも、もっとつっこんだ理由があるのです。沖縄を除いた小学校の校庭のサクラは、全て「ソメイヨシノ」という種類のサクラなのです。サクラと言っても、じつはエドヒガン、オオシマザクラ、エゾヤマザクラ、ミヤマザクラなどたくさんの種類があります。それに加えて、人間が品種改良して作り出したものを含めると、それだけで1冊の図鑑ができてしまいます。(実際に何冊も出ています) その中で、なぜ校庭のサクラはみなソメイヨシノなのでしょうか。それは、花が葉より咲きに咲くので見栄えがよく、さらにその花が大きいので美しい観賞用のサクラの代表だからです。
そして、もう1つ理由があります。ソメイヨシノは、江戸末期から明治初期に、江戸の染井村でエドヒガンとオオシマザクラの交配によって産まれた雑種です。そして、雑種のために種子からは育ちません。ではどうやってこんな短期間に全国に広がったのでしょうか。それは、接ぎ木によるものです。つまり、全国のソメイヨシノは遺伝的には同一のもの、クローンなのです。
ですから、東西に長い日本列島をあつかった理科の教科書において、どこでも同じものを観察できるものとして、ソメイヨシノはぴったりなのです。また、平均気温が0,2℃違うと開花が1日遅れると言う性質があるので、全国での比較がしやすいのです。
以上のような理由で、季節の観察にはサクラ(ソメイヨシノ)が大きく取り上げてあるのです。これらのことを直接子どもたちに伝える必要はありませんが、理科を教える者として、知っておいた方がいいことだと思います。
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