5月28日の書き込みで、自分の行ってきた理科の学習法として討議(話し合い)があることを書き込みました。この学習法は勿論理科だけでなく他の教科・領域でも活用してきました。ただ、このような話し合いは、やろうとしてもすぐにできるものではありません。ですから、(群馬県は小中交流をしているのので)小学校と中学校のどちらにおいても、学級経営の柱の一つとして毎年取り組んできました。
この話し合いをできるようにする手だてとしては、発言しやすい民主的な学級づくり、学習のルールづくり、話す事への抵抗感をなくすこと、そして話し合いに慣れるアクティビティなどが挙げられます。そこで今回は、学級づくりと発言のルールづくり、話すことに慣れるためのスモールステップについて、毎年取り組んできたもののうち、ある郡部の小学校の3年生で行った実践を紹介します。楽しく話し合いを行うためのアクティビティの紹介は後日また行います。
話し合いなどの学び合いを行うための基盤となるのは、多様な考えを自由に表明し合い、それを素直に受け入れられる、民主的な学級風土です。それによって、ただ発言するだけでなく、互いに聞き合う学習態度が育成され、「子ども同士の相互作用」という大きな力を産むことになります。このような学級づくりのために、年度当初から、全教科・領域はもとより、学級での生活全般において、教師としては次のようなことを行っていきました。
・発言や会話の時に児童が自分の言葉で話せるように、言葉に詰まった時も聞く態度を崩さず、辛抱強く待つ。それでも言えない場合は、優しくリードを試みていく。
・授業中に発言した児童に対しては、必ずコメントを返すことでその行為を認めていく。
・どのような発言に対しても、肯定的に受け入れる態度を示すことで、発言者に安心感を持たせる。さらに、発言者や発言内容を笑ったりする児童に対しては毅然とした態度で臨むことにより、どのような発言でも大切にすべきであることを児童に示していく。
・言いたいことを十分に伝え切れない発言に対しては、補助質問によって内容をはっきりさせる。さらに、それをわかりやすくまとめて返してやることによって、それを聞いている他の児童だけでなく、発言者自身にとっても言いたいこと明確にさせていく。
このような取り組みを常時行っていくことで、互いを認め合う、発言しやすい雰囲気が
徐々に形作られていきました。でも、発言の量についてはさほど増えず、それも教師に向けられてのもので、とても「学び合い」になるものではありませんでした。そこで、この学級の雰囲気の上に立って、発言のルールづくりを行いました。確かに、形から入るのはあまくりよいこととは言えないかもしれませんが、基本を徹底するためには、このようなことも必要であると思います。
まず、発言の終わり方の徹底です。年度当初は、児童のほとんどが「ハイハイハイ」と無闇に声を上げ、発言は算数では「5 」といった、単語のみというのが実態でした。そこで、新年度も第2 週となって学習が軌道に乗ったところで、まずは発言の終わり方について次のようなルールを導入しました。
・自信のある時は、「~ ~ です。」という形で発言を終わりにする。
・自信がない時は、「~ ~ だと思います。」という形で発言を終わりにする。
最初は言い忘れる児童の方が多いくらいでしたが、その時には「何か言い忘れているよ」などと温和に指摘することで、発言に対する拒絶感を持たせないような配慮をしながら習慣づけていきました。また、周囲の児童が「ほら、『です』って言って、言って」と優しく促す暖かい雰囲気が形成されたことも、大きなプラスとなりました。このようなことを通して、あまり時間もかからずに、発言の終わり方は徹底されていきました。ただ、声の大きさは改善できず、全体的に小さいものでした。
そして4 月下旬となり、学級が前述のような民主的な雰囲気になってきました。そこで、発言は友達に向かってするものであり、それを聞くことが授業では重要なのだと言う意識を児童に持たせるさせるために、次のことを新たなルールとして導入しました。
・発言者は、他の児童の方を向いて発言する。
・他の児童は、発言者の方を向いて発言を聞く。
なお、発言者は単に他の児童の方を向くだけでなく、みんなが自分を見ていることを確
認し、必要とあれば友達に注意をしてから発言をするようにさせました。みんなに注目されて発言することに違和感を感じる児童もいましたが、この学習習慣が定着するにつれて、自分が友達みんなに見られる中で発言するということが、今までにない発言への意欲に結びついていきました。そして、発言の数が増えるとともに、みんなを注目させることへの強いこだわりを見せる児童が多くなっていきました。
ただ、発言者がまわりを確認することなどに時間がかかり、授業のペースは落ちてしまいました。けれども、児童が自分たちで聞き合う態度を作り上げていくために、可能な限り待つつようにしました。なお、発言の声が小さめでも、他の児童が注目しているので十分に聞き取れることから、声の大きさについてはそれほど細かくは指導しませんでした。今から考えれば、これもきちんと指導すべきだったと思います。
次に、発言を聞くだけでなく、それを自分の考えと比べることができるように、次のような発言の繋げかたを、5 月の半ばに導入しました。
・「私(ぼく)は~さん(君)に賛成で、~~です」
・「私(ぼく)は~さん(君)とは違う意見で、~~です」
最初は言い忘れる児童も多かったですが、児童が互い指摘し合うことで、発言の際には友達の名前が挙げられるようになりました。そして、自分の発言に言及された児童は、学級における自分の存在感を実感するようになり、今まで以上に言葉を選んで発言するようになりました。ただ、必要ない時にも「同じ発言」が何回も発言されるようになってしまいました。そこで、教師が『ほかの意見』を求めた時には「同じ発言」を言ってもいいこととし、『別の意見』を求めた時には「同じ発言」は言わないというルールを追加しました。
6 月になると、話し合いの形態におけるスモールステップの第2 段である、「スクエア
ディスカッション」というアクティビティを行うようになりました。(後日紹介します) そこで、発言する前から自分の立場をはっきりさせるために、手を上げる時には、次のようなハンドサインをするように定めました。
・前の発言と賛成の場合 : V サイン
・前の発言と反対の場合: グー
・自分の意見を変える場合: 人差し指を立てる
・今までとは別の意見 : パー
これによって、話し合いの中で互いの意見を絡み合わせることが容易になりました。
発言のルールづくりと同時に、児童の話す力を高めるために、日直が行うスピーチ活動を朝の会で始めました。発言のルールづくりは1 学期に完成を目指したのに対して、こち
らは1 年をかけてのスモールステップを積んでいきました。
.スモールステップ1 「○ 文スピーチ」( 1 学期)
年度当初は、全員の前ではほとんど話すことができない児童が多いのが実態でした。そこでまず初めは、あるテーマについて3 つの文で話す「3 文スピーチ」から始めました。1 番最初のテーマは「自分の好きな食べ物」としました。そして、何テーマか行って児童が慣れてくると、「5 文」「7 文」と、スピーチの量を増やしていっきました。このように徐々に長くしてくことで、児童の話すことへの抵抗は少なくなり、1 学期末には「11 文スピーチ」をほぼ全員ができるようになりました。
.スモールステップ2 「○ 秒スピーチ」( 2 学期)
2 学期は、文の数でなく秒数でのスピーチ活動としました。最初は「20 秒スピーチ」としましたが、11 文を言える児童にとっては、すぐにクリアできました。そこで、「30 秒」「40 秒」
と伸ばしていきました。
.スモールステップ3 「1分間スピーチ」から「時間無制限スピーチ」へ( 3 学期)
3 学期は、まず「1分間スピーチ」から始めました。さすがにこれは長く、1回では話しきれずに何回も挑戦する子がでました。そこで、必要とあればメモを隠し持って、ちらっとなら見てもいいことにしました。でも、慣れてくるにつれて、メモを見ることもなく1分話し続けられるようになりました。そこで、2月中旬から、最終目標である「時間無制限スピーチ」に挑戦することにしました。今まで時間を計るのに使っていたキッチンタイマーはストップウォッチとしても使えたので、それで自分がどけだけ話し続けられるか挑戦するようにさせました。すると、学年末には全員が1分以上、3 分を超えた児童が何人も出る結果となりました。
このような、常に意識した取り組みと後日紹介するアクティビティにより、活発に発言し互いに考え合う学級が形成されました。このような学級になると、授業をする方も楽になり、子どもたちも楽しく主体的に授業に取り組んでくるようになります。
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